I think so./I feel so.

漫画や映画など読んだもの・見たもの・聞いたもの・使ってみたものや普段の生活に関する感想文です。内容は一個人である私の思いつきに過ぎません。

アニメ版『惡の華』第10話の感想

とことんすれ違う三者三様の思い

イベントで「7話を凌駕する」プレゼントのニュース - “惡の華 ~ハナガサイタヨ会vol.2~”レポ! ニコ生一挙放送情報も! - 最新芸能ニュース一覧 - 楽天WOMANと制作側から話の出ていたアニメ版『惡の華』第10話。中学生編の前半を締めくくるエピソードである「山の向こう側」事件です。
※ネタバレ注意


家にも学校にも佐伯さんにも帰れない春日くんは仲村さんに「これ以上このドブゲロな町にいる理由なんて、何かある?」と誘われるままに自転車で「山の向こう側」を目指して出発しました。「山の向こう側」には何があるのか?仲村さんは言います。「ねえ、山の向こうには何があるかな?私、いつも思ってた。向こう側には何もないんじゃないかって。世界はそこで終わってて、その向こうは、ただ真っ黒なドロドロがずーっと、死ぬほどぐちゃぐちゃしてるだけなんじゃないかって」春日くんは「なんか、わかる気がする」と答えつつ、「この町には何もない、どこも、誰も、あるのは錆びた鉄だけ」「旅に出たい」で締めてしまい、仲村さんに「クソ部品」と罵られます。「春日くんはただ、自転車漕いてればいいんだよ、どこまでもどこまでも、ずっーと」
町では飛び出した息子を探す、春日くんのお母さんの姿を佐伯さんが見てい不穏な何かを感じた佐伯さんが、食事中に仲村さんの家に電話をします。仲村さんは不在。いても立ってもいられない佐伯さんは文房具屋に行くと嘘をついて自転車に乗って春日くんを探しにいきます。
峠に差し掛かった二人、雨が降り始めます。雨宿りをすると、眼下に広がる町の景色。濡れた仲村さんのブラウスはブラジャーが透けて、春日くんはドギマギします。一方佐伯さんは総菜屋のおじさん(マキタスポーツ!)に中学生くらいの男の子を見なかったか、と聞こうとして、男の子と女の子と聞き直します。春日くんが仲村さんと一緒にいることを予期し、おじさんの答えで確信に変わりました。
春日くんの「何で自分たちはここにいるのかな」という問いに仲村さんは「変態だからだよ」と答え、春日くんは「変態も悪くないのかな。何か今、不思議と気分がいいんだ」と答えます。
「春日くん、逃げるなんてずるい」佐伯さんは雨に打たれながら必死に自転車を漕ぎます。
雨が止まないので、今のうちに寝とこうか、と仲村さんは横になります。春日くんはその様子にまたドギマギしつつ、横になります。仲村さんが「この音。町がクソムシの海に沈む音みたいだね」と言ったところに佐伯さんが追いつきます。
「ごめんね、私が追い詰めちゃったんだね、ごめんね、ごめんね…春日くんの心の中はどうなってるの?私達付き合ってるのに、どうして仲村さんのところに行くの?」仲村さんが代わりに答えます。「私は向こう側に行くの、春日くんはそれについてくるの。そんなに知りたきゃ教えてやるよ」と春日くんの服を剥ぎ取り「おめーとゴミデートしてた時もカス告白した時も、おめーのクソ体操着からだにまとわりつかせてズクンズクンしてたんだよ!春日くんは心にずっと体操着を着てる、それをさらけ出せるから変態なんだ本物の」それでも食い下がる佐伯さんは春日くんの胸に手を置きながら「私は変態だなんて思わない、でも私にぶつけて。仲村さんしか知らない春日くんがいるなら私に全部教えて、帰ろう、一緒に」と春日くんにすがります。春日くんはそれを聞き、ごめんねと言いつつ、仲村さんに「もういい、つまんない。一生そうやってこの町でクソムシとして野垂れ生きてろ」と言われると思わず仲村さんを追ってしまいます。また佐伯さんに引き留められ、仲村さんには本当にくだらないと言われ、もうどうしたらいいのかわからない春日くん。頭を抱えて叫び出す春日くんに仲村さんが「とっとと決めて。行くの?戻るの?これ以上私の魂をズクズグにしないで」と言うと春日くんが心の内を吐き出します。「僕は惡の華を読んでる、でもだから何なんだ?見ないようにしてた、本当の自分を、特別じゃない自分を。僕は空っぽなんだ。生身の佐伯さんに向き合いたくなんてなかった。普通にはなれない、普通の恋なんてできない、でも変態ですらない。仲村さんが期待するような人間じゃない。僕は最低なクソムシ野郎なんだ。僕に選ぶ権利なんて無いんだよ!」それを聞き佐伯さんは文庫本の惡の華を捨て「もういい」、仲村さんはそれを踏みつけ、ビリビリと破いて春日くんに叩きつけます。仲村さんは泣いていました。
そこに警察が現れ、三人は補導され、車に乗せられて町に戻されました。


身勝手な三人

今回描かれた「山の向こう側事件」に関する私の思うところは、以前当ブログに書いたのでそちらをどうぞ。下記リンク先の「山の向こう側事件 変態vs町 第1ラウンド」です。
『惡の華/押見修造』中学生編の考察 - I think so./I feel so.〜takashi_itoの読書感想文〜
今回こうしてアニメでこのエピソードをみて、私は改めてこの三人の身勝手さ・バラバラさ加減を感じました。誰もが自分のことで一杯一杯で悲しい程に非生産的。他の人とは違う何かを持っている春日くんに見出されたことに「特別な自分」を感じた佐伯さんは、見出してくれた春日くんが他の誰か=仲村さんに興味関心を移してしまうことを極端に恐れ、引き留めにかかります。その人との関係が切れてしまっては、自分が特別だということに自信が持てなくなってしまうためです。春日くんはこの時点で明確に仲村さんに惹かれている訳ではありません。春日くんのカラダが勝手に反応してしまうのは、仲村さんについていくことで「特別な自分」になれるのでは?ということを春日くん自身は気付かないまま、どこかで期待しているためです。仲村さんに期待していることに今は気付いておらず、佐伯さんの行動に動揺してしまい、この事件ではどっちつかずになってしまいます。仲村さんは、今の自分ではどうにも折り合いがつかないこの町とは別の、自分が折り合いをつけて生きられる場所=「山の向こう側」しか関心がありませんが、そこへつまらない日々や町の景色を一変させ得る、自分と同じでこの町一番の変態・春日くんがついてくることを期待しています。そんな三人がそれぞれ自分の思いだけを押しつけ合い主張し合いぶつかり合って結局何の答えも出なかった、それがこの「山の向こう側事件」だと私は思います。


マキタスポーツ

移動販売車のおじさんがマキタスポーツwマキタスポーツといえば夏帆のパンチラが毎回拝めることが話題になってしまい、実は内容がむちゃくちゃ面白いにも関わらずそれがあまり語られないドラマ「みんな!エスパーだよ!」のテルさん!ロトスコープでもテルさんぽかったよw


急ぎ過ぎ?

今回のエピソードは勢いのあるエピソードなのでギュッと詰め込んでテンポ良く、という意図なのでしょうか。私はもっとじっくり時間をかけて、2話位に分けて描いても良かったんじゃないか、と思いました。次回は取っ組みあって再契約を要求するあたりまででしょうか。原作ではこの辺りの仲村さんの表情が圧倒的に怖いので、アニメでどう描かれるのか楽しみです。

惡の華(3) (講談社コミックス)

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