I think so./I feel so.

漫画や映画など読んだもの・見たもの・聞いたもの・使ってみたものや普段の生活に関する感想文です。内容は一個人である私の思いつきに過ぎません。

別冊マガジン2013年6月号『惡の華/押見修造』第45話の感想

…ああ… あったかい…

そうだ、春日はもっと常磐さんにぶたれりゃいいんだ、こんちくしょー!な今回でした。読んでてニヤけた。
※ネタバレ注意

惡の華/第45話「夜の空ほど君恋しきよ」感想

別冊マガジン6月号掲載45話のネタバレあらすじと感想を。

幽霊の世界から抜け出す決意を固めてルドンモチーフの惡の華を握り潰し、常磐バイト先に押し掛け、周りの状況も顧みず告白した春日。常磐常磐のイマカレの晃司も唖然としつつ春日をたしなめる。常磐のことしか見えていない春日は晃司を押しのけ
「僕と生きてくれ」
「僕がきみの幽霊を殺す」
「下りよう」
「この線路から」
「きみが好きだ」

熱い涙を流しながら春日は訴える。
いい加減にしろよと苛立つ晃司に常磐
「もう晃司とはつきあえない」
引き止めようとする晃司が常磐の両肩を掴む、顔を上げた常磐の表情、うるうるに潤んだ瞳から涙が零れ、それを見た晃司はもう止められないことを悟ります。
エプロンを脱ぎ、カフェの制服のままコートを羽織り、店長にバイトを辞めることを告げ、春日と見つめあう。
「行こう 常磐さん」
二人は店を出て、何処へともなく歩き出す。信号待ちでどちらともなく自然に、しかし全く同じタイミングで手を繋ぎ、思わず笑い合う春日と常磐。そのまま抱き合う二人。
「…ああ…あったかい…」
と漏らす春日。バシッと叩く常磐

二人で下りた幽霊の世界

自分を押し殺して、本当の気持ちを閉じ込めた幽霊の世界。そこから抜け出すことを決意した春日くんが、その熱い想いで常磐さんを説得し、二人で幽霊の世界から下りました。常磐さんにどのような過去があり幽霊の世界に至ったのかは未だ描かれていませんが、お互いの過去を理解する過程が今後描かれるのかもしれません。そうなると
週刊プレイボーイのインタビュー*1にあった、仲村さんが春日くんに作文を要求する件の元ネタでもある

<聞き手>作文とは、またどうして?
<押見>実は、中学のときに少しだけ付き合っていた女のコがいたんです。特に何をするでもない、子供の付き合いだったんですけど、僕は大学に入って初めてできた彼女に対して「自分のすべてを知ってほしい」みたいな思考が働いちゃって、聞かれてもいないのにそのコのことをネチネチ言ってたんですね。そうしたら、彼女がキレて「おまえはなんなんだ。セックスもしてない元カノのことをいつまでもダラダラ言いやがって。おまえがいかに間違った人生を送ってきたか、一回ノートに全部書け」と。
<聞き手>それで、書いたんですか?
<押見>書きました。キャンパスノートに半分くらい、びっしり(笑)。

これの「聞かれてもいないことをネチネチと」が描かれるのかどうかが大変気になるところですww


常磐さんという人物

常磐さんについて、作者・押見は季刊エスのインタビュー*2で次のように述べています。

<聞き手>高校生編に登場する常磐さんは仲村さんの影もあるように見えますけれど、人物像としてはもう少し明るいですね。
<押見>常磐さんも抱えているものは仲村さんと一緒ですけどね。でも、ちゃんと現実とも折り合いを付けている。ただ、そういう生き方も、それはそれで色々問題にはぶち当たると思うんですけれど。

「年齢相応に成長し、自分を押し殺しつつも世間と上手く付き合う術を身につけた仲村さん=常磐さん」というように見ていいのかな、と思います。一見リア充と思われる常磐さんですが、春日と同じく本の事について話す時以外は醒めた目をしているように描かれていたのは、常磐さんもまた幽霊の世界に囚われていた、つまり「いろいろな問題にぶち当た」っているからです。その問題は今後明らかになり、春日くんと二人で乗り越えていくものと思います。幽霊の世界から抜けだしたことで、今度はその問題から逃げるわけには行かなくなのですから。


冷たい幽霊の世界から、あたたかみのある世界へ

最後の「…ああ…あったかい…」は別に人肌があたたかいわけじゃなく、幽霊の世界には存在し得ない心と心の触れ合いがもたらす、ほっとするようなあたたかみを、そこから出たことでようやく感じることができたという実感がこもっているようで、いいセリフだと感じました。


何にしてもまあ

「行こう 常磐さん」は「…仲村さん 行こう……」*3にならなくてよかったね、春日くん。次号は6月7日発売予定。普段より2日早いので嬉しいw


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*1:週刊プレイボーイ2013年4月15日号掲載

*2:季刊エス2013年4月号掲載

*3:コミックス7巻26P