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別冊マガジン2013年5月号『惡の華/押見修造』第44話の感想

おかえり、春日くん

まず最初に、このように言わねばなりません。大変だったね、よく帰ってきたね、おめでとう、と。

惡の華/第44話「罪深い僕の心が求めるのは」感想

※激しくネタバレしているので注意
別冊マガジン2013年5月号のネタバレあらすじと共に感想を。

 

世間はクリスマスイブを迎え、浮かれムード漂う学校や町をあとにし、春日はぼんやり家路につきます。家の前でふと立ち止まり、家とは別の方向にふらふら歩き出し、常磐へメールを打ち始める春日。何度も書き直すうちに佐伯の「あの娘も不幸にするの?」という言葉が蘇ります。違う、僕はあの小説に生きるための何かを見たんだと反論すると、今度は春日の足元から春日の影が話しかける。「それは勝手な思い込み。小説はなぐさめの道具。おまえは依存してきた、本に佐伯に仲村に。今度は常磐と小説に。」そうじゃないという春日に影は続けます。「何が違う?おまえはなぜ仲村に突きとばされたかわかってない。仲村はおまえと同じものなんて見てなかった、仲村の何も救えなかった、何もかも壊した、仲村も佐伯も父も母も、おまえがやったんだ!」影はやがてあの町を取り囲む山のシルエットに変わり、ケータイの画面に春日が何度も打ち直してそれだけ残った言葉「僕は」が浮かび、影は「僕はなんだ?」と言いながら春日を嘲笑します。そうだ、自分はからっぽでクソムシの不幸のかたまり、それでも、それでも、と言葉を継ごうとする春日の背後に仲村が現れます。春日が最後に見たままの、灯油で濡れた姿の仲村です。泣きそうになる春日ですが、それは幽霊であることに気づきます。この時春日は思い出します。常磐のプロット、幽霊殺人事件を。目の前に洋館が広がり、窓に誰かの影が映る。常磐との会話の断片が春日の脳裏を横切る。小説を書くと言った常磐、晃司とよりを戻したことをバカだと思う?と問うた常磐。そして春日は洋館の窓から覗く常磐と自分の幽霊を見て、常磐も自分と同じようにひとりで思い悩み、自分の本当の思いを幽霊として閉じ込めていることを知ります。そして遂に、洋館から、つまり自分を閉じ込めていた自分の心の檻である幽霊の世界から脱出することを決意します。もうあのときの仲村さんはいない、永遠に…いるのは、どこかの世界にいるはずの、今の仲村さんなんだ!決意した春日を見つめる仲村の表情は優しく、微笑みかけているように見えます。そして春日は「ルドンの惡の華」を握り潰し、駆け出します。何処へ?常磐の元へ決まってんでしょうが!常磐のバイト先のカフェ、そこにはもちろんイマカレの晃司もいます。でももうそんなものは春日の目には入りません。カフェに入るなり常磐

「好きだ 僕とつきあってくれ」

そこにいるのは生きた死人でも幽霊でもなく、今を生きようと決めた春日です。顔が赤いのは走ったから上気しているだけではなく、照れ臭いからだけでもなく、春日が生きた血の通った人間に戻ったことが表現されています。

 

 

とにかくおかえり、春日くん。

これから常磐さんが春日の気持ちを受け入れてくれようがくれまいが、晃司と悶着あろうがなかろうが、とにかくおかえり春日くん、と私は言いたい。

 

洋館にいる春日・常磐の幽霊と外にいる仲村の幽霊

洋館は上にも書いたとおり、本当の自分を閉じ込める檻のようなものと解釈していますが、洋館の窓から見えたのは、春日と常磐の二人の幽霊でした。本当の自分を出したいと願っていた仲村がそこにおらず、外にいて春日を見つめているというのは何を意味するのか?仲村はもうそこから出た、ってことだと思います。でも、どう出たのかが描かれることは無いように思います。読者的には知りたくても、春日はそれを知る必要もないでしょうし。

 

いやあ、でも良かった!

本当に良かった。良かったね、春日くん。もう彼が幽霊になることはないでしょう。さすが、私が見込んだだけのことはあるww

 

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