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I think so./I feel so.

漫画や映画など読んだもの・見たもの・聞いたもの・使ってみたものや普段の生活に関する感想文です。内容は一個人である私の思いつきに過ぎません。

アニメ版『惡の華』第9話の感想

レビュー 感想文 惡の華 漫画 アニメ 悪の華 押見修造

追い詰められる春日くん、追う佐伯さん、便乗する仲村さん

※ネタバレ注意
教室を荒らしたクソムシの海事件、床に描かれたルドンモチーフの「惡の華」によってただ一人誰が犯人なのか気付いた佐伯さん。自分のしたことに押し潰されそうな春日くんは佐伯さんに別れようと切り出すも、佐伯さんに拒まれます。春日くんは佐伯さんがどうして自分を拒まないのかがわからず、悩み、どこか遠い、自分のことなど誰も知らないところへ逃げたいという気持ちが募っていきます。




佐伯さんの疑念

佐伯さんは春日くんがどうしてあんなことをしたのかがわかりません。そしてもっとわからないのは、彼女である自分がわからないことを、なぜ仲村さんが知っているのか?ということです。学校のトイレで佐伯さんは仲村さんを問い質します。「春日くんに言っといてあげたよ。佐伯さんがせっくすしたがってるって」「春日くんはずぶずぶのど変態やろうだから」「どっからどう見てもど変態だけどね。この町で一番の」なぜ?なぜ仲村さんは春日くんの心のうちを確信を持って語れるのか…?だいたい仲村さんは何なのか…?


仲村さんじゃなくて私に!

佐伯さんは仮病で学校を休んだ春日くんの家に突撃します。今はまだ会えないからと言って出ていかない春日くん。佐伯さんは春日くんの部屋に向かって外から叫びます。「私、わからないの!春日くんの気持ち、わからないの!体操着のことは、嬉しいよ!私のこと想ってやったんでしょ?それより私はそれを隠されてたことが悲しかったよ!だから教えて!仲村さんじゃなくて私に!春日くんの頭の中、ちゃんと私にわからせて!待ってるから!」


遅いよ、春日くん

春日くんのことなら何でも知りたい、わかりたい、受け入れたいという佐伯さんの叫びは春日くんを逆にますます追い詰めます。なぜ自分を嫌いにならないのか、なぜ自分を受け入れようとするのか。そして教室荒らしの犯人であることが母親にもバレてしまいました。逃げたい一心で家を飛び出してしまいます。この町のどこにも自分の居場所がない!無意識に、しかし何かに引きつけられるように向かった先は河原。「遅いよ、春日くん」仲村さんが待っていました。この町の中に、彼の居場所はあったのです。それが「仲村さん」でした。


「向こう側」へ

家にも学校にも佐伯さんにも帰れないという春日くんに、仲村さんは山の向こう側へ行くことを提案します。「これ以上このドブゲロな町にいる理由なんて、何かある?」「仲村さん、一緒に来てくれるの?」「おめーが私についてくるんだよ、クズだるま」


この時点で既に噛み合わない3人

佐伯さんは春日くんをより強く求めはじめ、春日くんは仲村さんを求めはじめました。
体操着を盗んだことがクソムシの海事件(教室荒らし)によってクラスメイト一同にバレ、その結果佐伯さんに罵られて嫌われることで贖罪し、セックスの対象ではない、偶像的な美しく正しい天使としての佐伯さんを心のうちに留めようとした春日くんでしたが、クラスメイトにはバレず、佐伯さんにはバレるものの本来望んだものとは異なる結果【許され、受け入れられた】となり、そのためかえって春日くんは佐伯さんのことがわからなくなり、恐れ、遠ざけようとしはじめます。
佐伯さんは春日くんにつきまとう仲村さんの影を感じ、春日くんを許し受け入れ、より深く春日くんを取り込むことでその影を断とうとしはじめました。佐伯さんの春日くんへの愛情は最終的に「不幸にするのは私だけにしたら」というセリフに代表される【ろくでもない男を支える(ことで周りから同情され尊敬される特別な)自分】という一見共依存的な、しかし狡猾なポジションを取るまでに至りますが、何でも受け入れるという母性的な度量の大きさをセックスで表現してしまうことで春日くんとの亀裂は埋められないものとなり、その行為の裏にあった狡猾さを仲村さんに見透かされます。
仲村さんは今起きていることに便乗しつつも、春日くんとの微妙なズレがこの時点で見えはじめています。春日くんはどこかで「仲村さんと一緒」という考えが今後の行動のベースとなるのに対し、仲村さんは春日くんに対して徹頭徹尾「春日くんは私についてくる」というスタンスを変えません。夜の教室に忍び込む時も「早く来い」、今回も「ついてこい」、この先も「春日くんは私についてくるんだよ」「ついてくる?」という言い方をします。「仲村さんと一緒」という春日くんの捉え方と「ついてくる?春日くん」という仲村さんの立ち位置の違いは『惡の華』という物語全体通して大きなキズとなり、春日くんを苛むことになります。


いよいよ次回「山の向こう側事件」!

身勝手な3人による哀しい対決はどう描かれるのか?
そして今週6月7日金曜日は、別冊マガジン7月号・コミックス『惡の華』8巻・『新装版デビルエクスタシー』4巻・『新装版ユウタイノヴァ』1巻が発売!楽しみ!

惡の華 (8) (講談社コミックス)

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