別冊マガジン連載中の『惡の華/押見修造』佐伯さんを読み解く
別冊マガジン2月号・3月号で春日以外の主要キャラとして初めて高校編に登場した佐伯さん。リア充(w)としてそれなりに楽しくやっている様子。中学編一番の被害者とも言える彼女なりにいろいろあった3年間を越え、最後は冷たく「がっかりした」と言い放って去って行きます。この先また出てくることがあるのか無いのか分かりません*1が、『惡の華』の重要キャラクターである佐伯さんがどういう人物なのか、ちょっと考えてみたいと思います。
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※以下、ネタバレしているので注意でお願いします。
そもそも、どんな人物なのか?
『季刊エス2013年4月号』に作者・押見修造インタビューが掲載されています。
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『季刊エス 2013年4月号』惡の華/押見修造インタビューの感想 - I think so./I feel so.〜takashi_itoの読書感想文〜
この中に佐伯さんに関して押見はこう述べています。
<聞き手>(略)佐伯さんの方が一般社会では理想とされるタイプですよね。佐伯さんも押見さんのタイプだったりするんですか?
<押見>いや、どちらかと言うと一番嫌いなタイプです。(略)佐伯さんは世間に迎合というか、最初から合わせられて、そのままいける人というイメージです。
<聞き手>(略)佐伯さんは、仲村さんとは逆の方向で「分かってる」ということなんでしょうね。
<押見>そうですね。それは、あの町自体が象徴しているものとも同じだと思います。町を囲む山がお母さん的な存在。そこから先には行かなくていいわよ、という山……。佐伯さんはあの町の化身、山の化身というか。
この発言をベースに佐伯さんを読み解ければと思います。
世間に迎合できる人物
作者にそう評されてしまうというのもなんかアレな気もしますが、要するにバランス感覚が絶妙で、いろんな意味で頭が良い佐伯さん。
それを裏付ける、作中における以下の言動。
と、物分りが良く、自我とのバランスを取りつつ世間に迎合して生きて行ける。言い換えれば、ずる賢い。佐伯さんは作者が言う通り町の化身、世間そのものです。
別冊マガジン2013年3月号掲載『惡の華/第42話「つまり、僕は死んでいた」』での「がっかりした」発言の理由
何に対し、佐伯さんはがっかりしたのか?私は2つあると考えます。
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- 再会した春日の無様さ
- どこかで多少期待していた「向こう側」が本当になかったこと
前者については、初めてのデートの日、好きなものは好きなんだと言った(かのように佐伯ビジョンには映った)春日に、自分を振り切って仲村を選んだ春日に、どこか羨ましさを感じていたのに、だから春日に似た男に惹かれたりもしたのに、「向こう側」を志向し続けた挙げ句夏祭りの日に心中まで図る、いち早く自首したずる賢い自分とは全く違うピュアな仲村春日の姿に涙まで流したのに、再会した春日から死人のような、あの日から逃げ続ける無様を感じ、今度は小説だ?おまえいつんなったら生身の人間そのもの見ようとすんだよ?また逃げんだろおまえ?と「がっかりした」。
後者については、その無様な春日が体現しているのは「「向こう側」が本当に存在しないこと」であり、世間に迎合しつつもどこかでもしかしたらあるのかも知れないと思っていたのが、改めて本当に存在しないことを見せつけられて「がっかりした」。
佐伯さん、どうなるんだろうねえ?
私が思うに、無様な春日と再会することで佐伯さんは「ああ許しを乞うてよかった、世間に迎合してよかった、こんな無様にならんでよかった」という感じで、一気に醒めて、思春期の呪縛から本当に解放されたんじゃないかと。
作者・押見が影響を受けたと言う『いぬ/柏木ハルコ』の石原さんが中島くんに一気に醒める下り*5のよう。
他人を使って自己を相対化する佐伯さん(に限らず自分も含め世間一般はそうだと思う)らしいと言うか。
これで春日を吹っ切って、他のモブキャラと同じく正しい世間様の象徴になったんじゃないかと思いました。
あと、春日を吹っ切ったので小泉くんは捨てられちゃうんだろーなーwひどいなー、佐伯さんはw
…でも、私、仲村・常磐絡みの話をすると目が吊り上がる佐伯さん*6のこと、好きなんだよね。もやもやした出来事を思い出しながら自転車こいでる時*7のあの顔も最高に好きww
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