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I think so./I feel so.

漫画や映画など読んだもの・見たもの・聞いたもの・使ってみたものや普段の生活に関する感想文です。内容は一個人である私の思いつきに過ぎません。

『惡の華/押見修造』春日の人称変化について

変遷する春日の人称について考えたい

前々から気になっていたので、『惡の華』主人公・春日くんの人称変化について書いておこうと思います。
※ネタバレ注意

惡の華(2) (講談社コミックス)

惡の華(2) (講談社コミックス)


人称とは?

国語の授業よりは英語の授業で散々やったような気がするんですが、文章を書く時の、その文章が誰を主体にしているのかを区別するものです。というとかえって分かりにくいので以下をみてください。

人称 説明
一人称 話し手自身や話し手自身を含むグループ全体 私・僕・俺・私達・我々
二人称 話し手に対する聞き手・話し相手や話し相手のグループ全体 きみ・あなた・お前・あなたがた
三人称 話し手や聞き手以外の人や物 彼・彼女・あれ・これ・それ

今回考えるのは春日くん自身が自身をどう呼んでいるか、つまり春日くんの一人称についてです。*1

どう変わったか?

第1話で春日くんは「オレは本を読んでいる!」*2と言っています。最初、春日くんは自分のことを【オレ】と言っているのです。
第3話、仲村さんに作文がわりに「惡の華」文庫本を差し出してなじられて激高した時も春日くんは「オレは!こすりつけまくったりしてないっ!!」*3とやはり【オレ】です。
同じく第3話で佐伯さんの体操着を仲村さんに無理矢理着せられたところの四角囲みのモノローグでは「佐伯さんの体操着は僕の肌に貼りついて」*4と、【僕】に変わっています。
第4話、冒頭で山田に誘われたところでは「いや…オレは…」*5と、【オレ】になります。
その後、仲村さんと待ち合わせた場面での四角囲みのモノローグで「僕と仲村さんは」*6、その後も四角囲みのモノローグで「僕は仲村さんの」*7と、【僕】が出てきます。
自宅に帰りベッドの上では「何やってんだろオレ…」*8と【オレ】に戻りました。
しばらくずっと【オレ】が続き、第6話の「ゴミデートby仲村」で体操着を私服の下に着せられた春日くんはまたも四角囲みのモノローグで「僕の頭の中を」*9と【僕】を使います。
そして「カス告白by仲村」の第7話では「オレ…わ…わたくしと」*10と【オレ】「わたくし」が出ます。
「オレ」がずっと続いて「教室クソムシの海化事件」*11の間も事後も【オレ】です。
第17話「山の向こう側事件」で佐伯さんと仲村さんの板挟みとなる春日くんは頭を抱えて跪き「オレ…僕は……空っぽ…だ…僕は…惡の華を読んでる」*12と呻きます。
第18話では「佐伯さんはオレなんかいなくても」*13、第23話「じゃオレ本屋寄って帰るからー」*14と一旦【オレ】が入り、「夏祭り心中未遂事件」での「私こそクソムシだ!!!」*15で【私】が現れますが、こちら以外、中学生編において春日くんの人称は【僕】で固定されます。
高校生編になると第34話「オレは……いいや……」*16と「オレ」に戻ります。

変遷の意味

中学生編で【オレ】が四角囲みのモノローグで【僕】にゆれて、「山の向こう側事件」を契機に【僕】に固定化されます。そして3年を経た高校生編で【オレ】に戻る。私は、次のように考えます。

  1. 【オレ】は「幽霊」の状態*17、つまり自分/自我/変態(『惡の華』でいうところの意味における「変態」)を押し殺している状態における一人称である
  2. 【僕】は自分/自我/変態を解放している状態における一人称である
  3. コミックス1巻に出て来る「四角囲みモノローグ」の【僕】は表現されている出来事に対してリアルタイムに発せられたモノローグではなく、表現されている出来事に対しては未来の時間にいて自分/自我/変態を解放している春日からの、過去の出来事に対するモノローグである

中学生編において、人称が【僕】で固定化されるのは、思いを定めて仲村さんのために「向こう側」へ突っ走っている時です。
2013年6月発売予定の8巻に収録される、現在別冊マガジンで連載が続いている高校生編では、春日くんの人称のゆれは頻繁に発生しています。それは何を意味しているのかというと、高校生編において春日くんは自我を幽霊にして洋館に閉じ込めている状態から解放しようとしたり閉じてしまったりを繰り返している、ということです。

まとめ

春日くんの人称が【僕】になっている時は、自分/自我/変態の解放されている状態である、と私は思います。【オレ】の時は「クズ鉄うんち人間豆やろう」だということでw

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惡の華

惡の華

*1:調調査の対象はコミックス既刊の1〜7巻収録分

*2:コミックス1巻14P

*3:コミックス1巻99P

*4:コミックス1巻107P

*5:コミックス1巻109P

*6:コミックス1巻111P

*7:コミックス1巻113P

*8:コミックス1巻121P

*9:コミックス1巻203P

*10:コミックス2巻31P

*11:この前の第11話辺りから絵柄が変わり始め、第13話の衣替えでは登場人物の骨格ががっしりした絵柄になります。また、「山の向こう側事件」を境に再度絵柄が変わる。この絵柄変化も意図的なのかそうじゃないのか気になるところ。

*12:コミックス3巻154P

*13:コミックス4巻34P

*14:コミックス5巻16P

*15:コミックス7巻19P

*16:コミックス7巻61P

*17:別冊マガジン2013年5月号第44話