『惡の華』はだいぶ前から気になっていたものの、購入にまで至りませんでした。
妻が出産の為、実家に帰省しており、やることのなさからついつい全巻大人買いしました。
読み進めるうちに、自分とストーリーを重ね合わせ、自分にとっての思春期を振り返ることができたと思います。
内容は抜群に面白いです。 続きが早く読みたいです。アニメ化もされます。
そんな惡の華は中学編と現在連載中の高校編に別れていて、7巻途中から高校編となります。
中学編を中心に、私の感想を書いていきます。
※壮大にネタバレしています、ごめんなさい。
- 作者: 押見修造
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/03/17
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「『向こう側』なんて無い」ことを自覚する中学編
中学編の舞台は山に囲まれた地方都市。 中学2年の子達が抱える思春期のどろどろが描かれます。
ふとしたはずみで憧れのクラスメイト・ 佐伯の体操着を盗んだ春日。 その様子を仲村に目撃されてしまいます。 この町というフレームに収まりきれない自我=「変態」 を仲村に見出された春日は、山の向こう側や秘密基地に、 仲村と共に自分達がいるべき理想郷を求め作ろうとし、 クソムシどもの海から脱出を図ります。
春日は佐伯を交えた奇妙な三角関係に悶絶しながら、 結果として試みはことごとく失敗します。絶望ばかりを春日と読者に残し、中学編は終わります。
もやもやした読後感が残りますが、 程度の差はあれども思春期はそれをなにかで思い知るものだよな、 と私は思いました。
中学編の舞台は山に囲まれた地方都市。
ふとしたはずみで憧れのクラスメイト・
春日は佐伯を交えた奇妙な三角関係に悶絶しながら、
もやもやした読後感が残りますが、
仲村について
仲村には、二人で求めた理想郷である「向こう側」
それでも「向こう側」に執着したのは、変態をさらけ出せる
仲村は春日が好きなのか?
私はもちろん好きなんだと思います。
仲村は自分の恋愛感情にひどく鈍感もしくは極度に恐れているのだと思います。
自分で自分の気持ちが分からない・もう一人の自分が自分の中にいる、思春期特有のこの症状は、
春日は仲村の中に「向こう側」を求め、仲村も春日を「向こう側」
ものすごくナチュラルに春日と仲村は身体を寄せ合い、
仲村は佐伯と異なり、性を武器にしないのです。
時々春日は勝手に仲村に性を感じますが、
この春日と仲村の関係こそ、
仲村と佐伯の対比と三者三様の拒絶
性的なものを否定しつつ、
4巻以降、「向こう側」には一生行けない、
自分が佐伯のグロテスクさを引きずり出したにもかかわらず、
佐伯は「向こう側」を拒絶し、春日は佐伯を拒絶し、
しかし、繰り返しますが、その絶望を実体験として思い知るのが思春期だと思います。
高校編について
心中失敗で二人は離れ離れ、別の町に引っ越し、
高校編では季節は夏から冬になるのに加え、役割の入れ替えが行われているように思います。中学編での仲村の役割を今度は春日が、
まだ進行中なのでどうなるか分かりませんが、
同じ作者の『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』のように、です。
仲村は登場しないような気がします。
出てくるとしたら、
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佐伯について
でも、私は佐伯がやっぱり本当にかわいそうだと思う。
一番おかしくこじれてしまったのはこの人だ。
進行中の高校編で登場した佐伯、
その他、表現で気になったこと
仲村のメガネと春日の「悪の花」のイラスト
仲村のメガネ付け外しと春日の背景に時々描かれる「悪の花」のイラスト、意味合いは同じだと思います。メガネを付けているときは閉じている、外したときは開いている=皮がひんむかれている状態ではないかと。
が、教室を荒らした夜の仲村、メガネつけっぱですね。。。
クソムシの海
海なんだから「果て」は無い訳で。行っても行ってもずっと海。 ってことは「クソムシの海」に沈む町、その町を囲む 山の「向こう側」なんてやっぱり無いという結末を暗示する表現だと思う。
絵柄について
所々、柏木ハルコの絵に似ている様な気がする。 特に教室をめちゃくちゃに荒らした夜、絵柄も込みで『ブラブラバンバン』 みたいだった。
物語が進むにつれて、絵柄がオトナっぽくなるのは、 成長に合わせて意図的に絵柄を変えているんだろうか。
クソムシの海
海なんだから「果て」は無い訳で。行っても行ってもずっと海。
絵柄について
所々、柏木ハルコの絵に似ている様な気がする。
物語が進むにつれて、絵柄がオトナっぽくなるのは、
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まとめ
私も物語の舞台と似て山に囲まれた、
私の過ごした町の夏は短く、冬は長い。夏は山の針葉樹の重い緑と平地の稲の軽い緑しか目に入らないし、
私の思春期も今思えば、それなりに鬱屈して、
過疎化が進み、ここで暮らし続けるには農業か肉体労働か工場労働か公務員以外に職業も無い町に、自分の居場所があるなんて思えない。こんなどん詰まりの終わりの見えた町で、当たり前みたいにここで暮らすことを選ぶどうしょうもない連中と、
一分一秒でも早く、何とかここを抜け出したい。抜け出さないと死ぬ。
町のありとあらゆるもの、
そんな「ここではない何処か」を求める気持ちは、思春期の普通の感情なんだということが、
私はクソムシどもの住む灰色の町を15で片足抜け出して、18で完全におさらばして東京に出て
がっかりした、心底。
でも結局のところ、ふがいない自分も訳の分からない自分もひっくるめて自分なんだと認め、
思春期をこじらせてしまった春日も仲村も佐伯にも、
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