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I think so./I feel so.

漫画や映画など読んだもの・見たもの・聞いたもの・使ってみたものや普段の生活に関する感想文です。内容は一個人である私の思いつきに過ぎません。

別冊マガジン2013年9月号『惡の華/押見修造』第48話の感想

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罪は赦されるのか?『惡の華』新章スタート

「この傷がたとえ治っても」
「傷跡は…なくならないから」
「どこかで必ず」
「向き合わなきゃいけなくなる」
「…だから」
「行くよ」

第47話での常磐さんとの春休みの過ごし方についての会話をきっかけに春日くんの中に生まれた過去に対する向き合い方への不安。このまま逃げ続けるのか?祖父が倒れるというニュースで春日くんは桐生に行くことを決意します。過去、そしてあの街と逃げずに向き合い、自分がしたことは何だったのか、自分がいないあの街に何があるのかをその目で確かめるために、街の向こう側に放逐された春日くんは今、街に戻るのです。

先月号「惡の華」第47話のあらすじと感想はこちら
別冊マガジン2013年8月号『惡の華/押見修造』第47話の感想 - I think so./I feel so.〜takashi_itoの読書感想文〜

別冊マガジン2013年9月号『惡の華押見修造』第48話のあらすじ

※ネタバレ注意

桐生へ向かう車の中、常磐さんに祖父が倒れたため桐生に行くこと、心配しないようにとメールする春日くん。車窓には懐かしい桐生の街並み。渡良瀬川の河原、ソニーの看板、サンアイ。町を囲む山。
病院に着くと親戚一同が病室に集まっていた。冷たい視線が春日一家を貫く。おばあちゃんだけが優しい。おじいちゃんは今夜がヤマらしい。従兄弟と思われる二人が春日くんに「おじいちゃんの手足が冷たいからみんなでさすって暖めよう」と言うが、春日くんを見つめるその視線は冷淡だ。
死にゆくおじいちゃんの足をさすりながら春日くんは考える。おじいちゃんはこの街で生まれてこの街で死んでいく。本当は自分もそうなるはずだった。しかし自分はこの街を出て生き延びている。この街は一体何なんだ?
顔色の悪い春日くんを見かねたおばあちゃんがちょっと休んでこいという。お父さんも休むことを勧め、春日くんはその言葉に従い、一旦病室を出る。メールチェックすると常磐さんから「無理しないでね」とメールが来ていた。
病室に戻ると、おじいさんは亡くなっていた。悲嘆に暮れながらおじいさんの亡骸を車に乗せ、病院を出る春日一族。その時、従兄弟の二人が春日くんに詰め寄る。
「おじいちゃんが死んだのは高ちゃんのせい。よくのこのこ来れるもんだって言ってたよ、みんな。あれから俺らがどれだけ肩身の狭い思いをしたかわかってるのか。一言も謝りもせず。さっきおじいちゃんの死に目にあえなかったのはおじいちゃんが高ちゃんを拒否したから。なあ?どう思う?」
春日くんは「ごめんなさい。すみませんでした」と頭を下げる。
「悪いと思ってるなら一生かけて償えよ」従兄弟たちはそう言って去る。
お寺での通夜、春日くんは受付に立つ。弔問客がひっきりなしにやって来る。春日くんの姿を見ては突き刺すような視線を投げる。
母親に連れられて現れた一人の少女。春日くんを一瞥し、手を握りしめ「ひさしぶり」と言いながら目を逸らす。クラスメイトで佐伯さんの親友・木下さんだった。


その後の桐生の街、残された人々

3年前の事件によって親戚一同は相当迷惑を被ったようで、特に年の頃が近い従兄弟二人はかなり肩身の狭い思いをしたようです。投げる言葉も厳しい。従兄弟が投げる「一生かけて償え」という言葉、おそらく言っているこの従兄弟はその意味を深く考えてはおらず、死を目の当たりにしてセンチメンタル気分で言ってしまったカジュアルな罵倒でしかありません。言われた春日くんにとっては相当重い言葉であるのは間違いありませんが。


冷淡なまなざしに射抜かれる春日くんの「罪」とは何か?

このようにストレートに春日くんにぶつけてくるのはやはり子供らしいと言えるのでしょう。大人はもっと冷淡で冷酷です。無言で冷ややかなまなざしを突き刺してきます。明らかに罪人を見る視線。罪人を見る視線ですが、彼らは一連の犯罪行為に対して咎めようという意識があるのではない。
街の人間が考える春日くんの罪はあの犯罪行為そのものにはないのです。結果としてあの犯罪行為という形になってしまった、そして心中を試みるまでに至った、街の在り様を否定することになる「向こう側」を求めるその意識を「罪」としているのです。


一連の事件すべてを知り、その後の街のすべても知る木下さん登場!

ついに出ました。木下さんです。木下さんは中2の春から夏の終わりにかけての出来事すべてを知り、なおかつ春日くんの知らない、春日くんがいなくなった後の桐生での出来事すべてを知っているはずです。彼女の口から何が語られるのでしょうか?


絵柄が変わる

今回、絵柄が変わったように私は思います。絵柄は作者の画力向上などによってももちろん変わりゆくものだと思いますが、私は、押見が『惡の華』においてはストーリーの区切りごとに意識的に変えていると思います。
クソムシの海事件までは少年漫画らしいファニーで柔らかい線。
パンツ小屋炎上までは陰のある絵。
心中失敗まではどんどん尖っていくシャープな線。
高校生編では徐々にシャープさを残しつつ丸みを帯びていく線。
そしてここにきてまた変わる。漫画っぽいけど、漫画っぽくない絵。自分でこう書きながら全然うまく言えてる気がしませんが、とにかく変化して、それは意識して変えているものだと私は考えます。