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I think so./I feel so.

漫画や映画など読んだもの・見たもの・聞いたもの・使ってみたものや普段の生活に関する感想文です。内容は一個人である私の思いつきに過ぎません。

コミックス『ハイスコアガール/押切蓮介』第1巻の感想

漫画 ハイスコアガール レビュー 押切蓮介

ゲームプレイが物語を紡ぐ『ハイスコアガール』の魅力

私、いわゆる団塊ジュニア世代なんですが、御多分に洩れずファミコンをはじめとするテレビゲームに狂ってました。小学生頃から大学卒業まで、随分長くゲームが自分の中で最も楽しいエンターテイメントとして君臨していて、その頃の熱はもう無いものの、子供が生まれた今でも自分のゲーム機(3DSPSPWii)で遊んでいます。メダルゲームしか無かったデパートの子供広場的なスペースにアーケードゲーム機がどんどん増えていく様も見てきました。ストⅡにもバーチャにも湯水のように100円玉を注ぎ込み、スペースハリアーはディズニーランドのゲームコーナーでクリアした馬鹿野郎です。『ハイスコアガール』はそんなゲーム馬鹿だった私が懐かしく読めるだけでなく、押切蓮介の「ゲームプレイで登場人物の心情を描く」前人未踏の表現方法(少なくとも私は『ハイスコアガール』以外にこのスタイルは知りません)の虜です。


ハイスコアガール押切蓮介』1巻あらすじ

※ネタバレ注意
1991年、運動も勉強もダメダメな主人公・矢口ハルオは、ことゲームとなれば「豪指」と自称するほど、かなりの腕前を持つ小学6年生。ハルオはある日、ゲーセンのストリートファイターⅡで対戦で使うには難しすぎるザンギエフの使い手にメタクソにやられ、夜食代500円を失ってしまう。ザンギエフを使っていたのは同じクラスで成績優秀、皆に慕われ、家も金持ちな女子・大野晶。憩いの場所であるはずのヤニ臭いゲーセンという聖域を、本来ここにいてはいけないはずの大野に乱された気がしたハルオは、ストⅡで忌み嫌われる卑怯な戦法「待ちガイル」「投げハメ」でリベンジを果たすが、激怒した大野にブン殴られる。これがふたりの奇妙な因縁の始まりとなり同じ趣味であるゲームを通じてお互いを分かりあっていく。しかし大野は家の都合でアメリカに行くこととなり、ふたりは離れ離れになる。


聖域を侵食するエイリアン

この1巻では大野がハルオの安住の地を繰り返し侵略するエイリアンのように描かれます。クラスメイトからも担任教師からも軽んじられるボンクラな自分が唯一輝ける世界=ゲーセンに突如として降り立った大野によって、ゲームプレイに関しては大人顔負け、「豪指」と自称する腕前を持つハルオのプライドは卑劣な手段を取らざるを得ない程ズタズタに引き裂かれてしまう。しかし負けず嫌いなこの少年は、小キック以外のボタンが利かない劣悪な環境にあっても投げ出すことなくベガを倒し、自らを逆境に追い込みながらファイナルファイトをクリアする大野のゲームに対する愛情・姿勢に尊敬の念を抱くようになります。


ゲームでつながるふたりの世界

風邪をひいて学校休んだハルオにプリントを届けるため、ハルオの部屋に上がる大野。ハルオの部屋にはアーケードゲームが家庭で楽しめる夢のマシン・PCエンジンがあります。PCエンジンに興じる大野を見て、ハルオは大野が自分と同じ理由…日々溜まった鬱憤をゲームで発散するためにゲーセンにやってくることに気付く。具合が悪いにも関わらず様々なPCエンジンのソフトを一生懸命大野にレコメンドするハルオ。ふたりをゲームが結びつけるのです。


かけがえの夏休みと、お別れ

ふたりはかけがえのない夏休みを過ごします。謎のゲーセン・がしゃどくろからの帰り道に見せるハルオの優しさ。靴を貸してくれたり、美味しいメンチカツをおごってくれたり。そしてこのセリフ。

じゃあさ
またしんどくなったら逃げてこいよ…
また妙チクリンなゲーセンに連れてってやっからよ
*1

大野にとってハルオは、厳しい家庭の躾から楽しい世界に連れて行ってくれる、大切な存在になります。しかし、大野のアメリカへの移住による別れの時が迫っていたのです。別れる前になんとか長くハルオと一緒に同じ時間を過ごしたいがため、クラスメイトの誘いに乗って訪れた花畑と遊園地で、しかし中々ハルオと一緒になれず、ムスーっとしてしまう大野。ようやくゲームコーナーでふたりきりになると、大野はふたりで並んで遊べるゲームばかりをプレイしようとします。長く一緒に遊べるファイナルファイトの筐体の前でハルオのシャツを引っ張る時の大野の表情!何ですかこの可愛さ加減!ゲームコーナーを出た後もアトラクションを楽しみます。観覧車には乗れなかったけれども、バスの中で肩を寄せ合い、疲れて寝てしまうふたり。そして新学期、ハルオの耳にも大野が転校してしまうという話が入ります。


ショックを受けるハルオ

自分の聖域を侵す、自分よりゲームが上手い、いけすかない、忌々しい大野なのに。その大野がいなくなることに大きなショックを受けている自分に気付くハルオ。お別れの会でもハルオは大野にどう接すればいいのかわからなくなっています。お別れ会ではプレゼントを渡すルールなのに、何をあげればいいのか見当もつかず、クラスメイトになじられます。そして

行くなら行くで早く行っちゃえよ
俺のゲーセンも荒らされなくて済むからせいせいするぜ…‼
*2

と、憎まれ口まで叩いてしまう。
クラスメイトに見送られ、クルマに乗って走り去る大野。ハルオは大野のいないゲーセンに行きます。自分の聖域を侵す大野。自分のプライドを引き裂いた大野。いけすかない大野。でもゲーセンに来るたびに大野の姿を探してしまう自分。ゲームの腕前は尊敬できる大野。初めてできた、自分の同志である大野。そんなことを考えていると、ゲームのキャラクターたちが自分に話しかけてくる。ガイルが「お前の気持ちはそれだけか⁉」「己に正直になれハルオ」、安堕婆が、ブランカが、源さん、様々なキャラクターがハルオを促す。空港目指してハルオが走り出す。


がしゃどくろの指輪

なんとか間に合い、大野に語りかけるハルオ。これからゲームセンターに起きるであろう盛り上がり、それを大野と一緒に楽しめないことのさみしさ。

これな…
お前と一緒に行ったゲーセン「がしゃどくろ」のクレーンゲームで取ったんだ…
*3

と言って指輪を差し出す。

これ…
この世のものじゃないかもしれないし
いろいろな意味で気色悪いかもしれねーけど
今お前にあげれるもんはコレしかねえ…
もらってくれるか?
*4

大野はハルオに抱きつく。ハルオの背中に指を立てて、初めて声を出し、嗚咽する。指輪を受け取り、家族に引き剥がされる際、照れ隠しなのか、ハルオの顔を引っ掻く。飛び立つ飛行機を見つめ、ハルオは投げハメに頼らずとも互角に戦えるようにガイルを強化することを考えている。大野は左手薬指に指輪をはめている。


鈍い子だよハルオは!

指輪をあげることの意味など知りもせずにあげてしまうハルオ。そして左手薬指にそれをはめてしまう大野。大野は左手薬指にはめるのは何を意味するのか、完全に分かっている。でもそれをくれた奴は指輪をあげる意味なとなにも分からずナチュラルにやってしまう女殺しだぞ!大野はハルオのことが完全に好き。しかしハルオは大野が好きだとか、まだ全く分かっていないのです。ハルオが分かっているのは、大野が自分にとってかけがえのない同志だということだけ。そんな奴がくれる指輪を左手薬指にはめていいのか大野よ!という、私にとっては恥ずかしながらキュンキュンしてしまう『ハイスコアガール』1巻でした。


「ストⅡ」私の思い出

スーファミ版ストⅡが出た時、一人暮らしの自分のアパートにボンクラ仲間4人集めて1週間くらいストⅡ合宿をやりました。ストⅡはちょうど大学が夏休みに入る辺りに発売されたのです。全員左手親指にマメを作り、皮が剥け、それでも狂ったように昼も夜もなく対戦しまくるのです。私はリュウと本田(私達のグループではエディと呼んでいた)を使っていました。ああ、懐かしいなあ。。。

*1:コミックス1巻112P

*2:コミックス1巻147P

*3:コミックス1巻163P

*4:コミックス1巻163P