I think so./I feel so.

漫画や映画など読んだもの・見たもの・聞いたもの・使ってみたものや普段の生活に関する感想文です。内容は一個人である私の思いつきに過ぎません。

コミックス『惡の華/押見修造』春日くん家のテレビはなぜお笑い番組を写さなくなったのか?

惡の華』春日くん家のテレビの謎

春日くん家のテレビといえば、いつもいつもお笑い番組ばかり写ってた気がします。それが別冊マガジン8月号掲載第47話ではお笑い番組を写さず、団欒の春日家が写り込んでいました。
別冊マガジン8月号第47話についてはこちら
別冊マガジン2013年8月号『惡の華/押見修造』第47話の感想 - I think so./I feel so.〜takashi_itoの読書感想文〜

気になる描写なので、私の考えをまとめてみました。

惡の華 (8) (講談社コミックス)

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そもそも春日くん家のテレビには何が映ってきたのか?

コミックス第1巻からテレビが出てくるシーンを追っていくと気になることが出てきます。それは、テレビと春日くんの両親がセットで描かれることです。テレビが描かれるシーンをまとめてみました。

掲載ページ 写るもの 父母
1巻50P お笑い番組 いる
1巻120P スイッチ切れ いる
3巻8〜9P 天気予報
4巻21〜22P お笑い番組 いる
4巻118P スイッチ切れ いる
5巻37P バラエティ番組 いない
6巻10〜12P スイッチ切れ いる
6巻66P スイッチ切れ いる
7巻54P スイッチ切れ いる
7巻142P バラエティ番組(笑い声あり)
46話4P お笑い番組 いる
47話6P スイッチ切れ


スイッチが入っていない時はほぼお笑い番組

バラエティ番組を視聴している時が2回、うち1回はテレビから笑い声が流れているので、これもお笑い番組にカウントすると12回中4回はお笑い番組。スイッチが入っている時は6回中4回、実に66.7%。そんなにお笑い番組が好きなのか春日家よ!?


高校生編で顕著な「間を持たせるためのテレビ」

「家族の状態」を考えると中学生編のテレビ描写は4巻22P以外はそれほど意味が無い。4巻22Pのお笑い番組は「どん詰まりに陥って思考がわやくちゃになっている春日くん」「思春期の難しい時期で、問題行動が止まない息子を持ち苦悩する両親」この二種類の苦しみをより鮮明に描くため、暗いその場面とは全く違う能天気な馬鹿笑いを伴うお笑い番組がテレビに写し出されている。
高校生編のテレビ描写は3年前の春日くんの「やらかし」以降、お父さんは酒ばっかり飲んでお母さんはイライラして春日くんは幽霊野郎で、バラバラに瓦解しつつある春日家は、常にテレビが、それも馬鹿馬鹿しいくらいのお笑い番組が写っていないと痛々しい沈黙やどんよりした空気が家庭内を支配し、間が持たなっている。家族団らんにふさわしい笑いをテレビの音声によって補給していると言ってもいい。それが第46話における春日くんの「ただいま」によって家族の絆が復活し、第47話ではお笑い番組の笑い声がなくても春日家には笑顔が溢れるのです。


まとめ

春日家のテレビ描写は、つまりこういうことだと私は考えます。

  • 春日家のテレビはお笑い番組ばかり写しているようでいて、実は「家族」を写し出している

第47話6Pではテレビ画面に春日家の楽しげな団らんが写り込んでいます。心のこもった「ただいま」で家族の絆復活。よかったね春日家。