I think so./I feel so.

漫画や映画など読んだもの・見たもの・聞いたもの・使ってみたものや普段の生活に関する感想文です。内容は一個人である私の思いつきに過ぎません。

映画『俺たちに明日はない』感想

映画『俺たちに明日はない』を観た

もし「観たことないけど、一度は観たような気になっている有名映画」なんてランキングがあったら、結構上位に入る映画だと思う。要するに色んな所で語られすぎて、観なくても話のスジを知っちゃってる映画ランキング。このランキングの1位はタイタニックで2位はアバターだね。他にはイージー★ライダーとかタクシードライバー、卒業なんかのニューシネマも入りがちなはず。

俺たちに明日はない [DVD]

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貧しい人たちがボニーとクライドにみんな優しい。警察を、銀行を、商店を徹底的に痛めつけるバロウギャングをヒーロー視できるのは、彼らが傍観者だから。当事者となってしまうモスの父親は貧しい白人だが、モスの罪を軽くすることと引き換えにボニーとクライドを、バロウギャングに辱められた保安官に売る。
そしてあの哀しく美しい結末を迎える。グロテスクかもしれないが、私にはとても美しく見えた。クライドがEDという設定は知らなかった。ようやくセックスできて肉体的にも深くボニーと結ばれたところでやってくるこの結末が哀しい。この二人は蜂の巣にされて死ぬことを予め知っていてもやはり哀しい。
死ぬことや失敗すること、敗北することで美しく哀しく終わるのがニューシネマだと個人的には思うけど、じゃあその先どうなるのか?というのはなかなか描かれない物語だ。たまにあっても大概おかしな方向に行く。ニューシネマの影響下にあり、ベトナム帰還兵の疎外感や哀しみをアクションとバランスを取りながら見応えある映画にまとめたのが「ランボー」だと思うのですが、最後投降したランボーのその後を描いたのが「怒りの脱出」や「怒りのアフガン」ではもう「ランボー」観て感じたあの気持ち返してくれよ!てなもんです。映画ではないけれど、このブログで何度も書いている漫画『惡の華押見修造』も「その後」を描く物語*1です。死ねもせず、その時点ではなにも成しえず、ぶざまに今を生きる春日くんがどう過去を清算し、思春期地獄から抜け出すのかが楽しみで、何度もブログに書きたくなってしまう。
ところどころ動きが飛んだりするのは低予算映画の常で、ちゃんとした編集スタッフを雇えないニューシネマ全般に言えることで、でもそれがいい味を出してしまうという不思議。ニューシネマってやっぱ面白いな。

*1:季刊エス2013年4月号「押見修造インタビュー」に「その後を描きたい」という発言がある。