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I think so./I feel so.

漫画や映画など読んだもの・見たもの・聞いたもの・使ってみたものや普段の生活に関する感想文です。内容は一個人である私の思いつきに過ぎません。

映画『3月のライオン 前編』の感想※ネタバレ注意

みんな何かを得ようと戦っている、ボロボロになりながら

観てきました、映画『3月のライオン 前編』。原作は言わずと知れた『3月のライオン羽海野チカ』、2016年秋からこの間までアニメも放送されていました。
アニメは原作そのものと言っていいほど忠実に丁寧に描かれていましたが、実写映画の方はどうでしょうか。若干不安を感じながら映画館を訪れました。

映画『3月のライオン』主題歌入り予告編

映画『3月のライオン 前編』あらすじ

※ネタバレ注意
両親と妹を交通事故で失った桐山零(神木隆之介)は父の友人で将棋のプロ棋士・幸田柾近(豊川悦司)に引き取られて内弟子となる。やがて史上5人目の中学生プロ棋士となった零は幸田の家を出て一人暮らしをしている。自分を養い、棋士として育ててくれた幸田と対局し勝利を収めるが、それは幸田が掴みかけたチャンスを潰す苦いものであった。
育ての親のチャンスを潰したことに落ち込む零は先輩棋士に連れて行かれたスナックで未成年にも関わらず飲酒、挙句泥酔し道端でで捨てられる。倒れている零を見かねて助けてくれたのは、近隣の町に住む川本あかり(倉科カナ)だった。。。
詳しくはぜひ劇場で!


丹念に描かれる「香子が父を恨む理由」

原作ではあまり描かれない零の内弟子時代は、丁寧に丹念に描かれていたように思います。とはいえ幸田の実子である香子(有村架純)と歩をぶっちぎって強くなる過程=「居場所を守るために努力した」という印象は原作よりも薄いのですが、逆に香子や歩も将棋を頑張っていたところが描かれるので、香子が父を恨む理由はよくわかります。そこに時間を掛けたのは、香子の出番がかなり多いためかと思います。そして香子の出番が多いと当然後藤正宗(伊藤英明)の出番も多くなります。
ということで物語は零と香子と後藤を軸に描かれていきます。

多彩な登場人物達

原作の「3月のライオン」は群像劇だと思って読んでいます。一人ひとりのキャラクターの小さな細かいエピソードと、他のキャラクターからの視点が折り重なることでキャラクターが立体的になり、物語に深みを与えています。映画の方は時間の縛りもあるせいかキャラクターの描き方が性急な感じがしました。
しかしそう感じてしまうのもじっくり描ける原作やアニメを見てしまったからと言えるかもしれません。映画でもやはり零や二階堂晴信(染谷将太)、島田開(佐々木蔵之介)、宗谷冬司(加瀬亮)川本三姉妹(ひなた=清原果耶、モモ=新津ちせ)は大変魅力的でした。
スミスや松本、神宮寺や柳原はなんだか富樫と虎丸、月光と雷電みたい。「ゲゲー!」「あれは!」みたいなw
キャストのビジュアル面での役作りが原作に無理なく寄せてあるため絵作りに安心感があり、原作の雰囲気がとてもよく出ていたと思います。

緊張感あふれる対局シーン

終盤で描かれる3つの対局、島田vs.後藤、零vs.山崎順慶(奥野瑛太)、宗谷vs.島田はいずれも緊張感がありました。名人・宗谷に角を打てばと指摘を受けたボロボロの島田の表情もさることながら、おやつを食べながらメンチを切り合う島田と後藤も良かったですし、新人王戦での山崎の緊張・落胆・喜び・絶望などが綯い交ぜになった演技に、将棋というたった一手を仕損じれば必敗となる勝負の、ギリギリの緊張感で臨む厳しさを感じました。

怪演!染谷将太

でも今作での演技といえば二階堂役の染谷将太でしょう。ビジュアルの特殊メイクに目が行きがちですが、将棋に集中して命を削っているキャラクターをこんな風にアウトプットするのか?という驚きがあります。アニメでは特にコミカル寄りに描かれていたキャラクターですが、生身のヒトとしての映画版二階堂は非常に説得力がありました。

零について

零に限ったことではなく今回の映画全体に言えることではありますが、零の言動の唐突な感じが少し気になりました。時間の制限や後編でより深く描写されるのかもしれませんが、vs.山崎で無理筋を打とうとして思い直すシーンまでの二階堂との関係性がもう少し深く描かれてもよかったかなと。MHK杯解説での「自分を大切にしてくれ」、「頭かち割ってください」、「伝説をつくろう」、この流れがあってそこでようやく自分の至らなさに気づいて無理筋を引っ込めるのが感動的になるんだと思うのですが、映画の方ではなんで急に二階堂の声が聞こえて引っ込めちゃうの?みたいな。う〜ん。
養父を打ち負かして罪悪感に打ちひしがれて思い悩んでいる、というのがあっさりスミス&松本の口から説明されてしまったり。カッコウのくだりが描かれないのもどうかと思いました。
自分の居場所を守るためには将棋しかなく、だから全てを捨てて将棋に己を捧げている、でもそれでいいのか?自分の大事な人たちを不幸にしているんじゃないのか?自分は間違ってるんじゃないのか?というのが零の悩みであって、そこはもう少し時間を掛けて欲しかったというのが正直なところです。
原作やアニメを知らない状態で観れば感じ方はまた違うのかもしれませんが。

後編に期待

全体的にはなかなか楽しめました。後編はまたガラッとテイストが変わってきそうなので、また観に行きたいと思います。

島田のおやつ

私が非常に気になったのが島田のおやつ。
あれは地元から送られてきたやつだろうな。島田の家のシーンでダンボールから荷物取り出しながら零と話すシーンがあるけど、あそこで出してたのがあのシーンのおやつじゃないかと思う。干し柿と、くじら餅かゆべしか・・・形は切ったくじら餅みたいだったけど、くじら餅は砂糖まぶしたりしないはず。でも天童あたりのくじら餅はまた違うのかな?