I think so./I feel so.

漫画や映画など読んだもの・見たもの・聞いたもの・使ってみたものや普段の生活に関する感想文です。内容は一個人である私の思いつきに過ぎません。

別冊マガジン2014年6月号『惡の華/押見修造』第57話の感想

最終回に描かれたのは

惡の華』もついに今回が最終回。夢の中で未来を見た春日くんは、突き動かされるように白紙のノートに向かった前回から、今回は描かれたのは。。。
前回のおさらいはこちら。

別冊マガジン2014年5月号『惡の華/押見修造』第56話の感想 - I think so./I feel so.〜takashi_itoの読書感想文〜

別冊マガジン2014年6月号『惡の華押見修造』第57話のあらすじ

※ネタバレ注意
中学生の仲村さんが授業を受けている。仲村さん以外の人物は真っ黒いグシャグシャで、世界そのものも歪でささくれだっている。テストの答案が一人ひとりに返され、仲村さんが教師に呼ばれると。。。
詳細は別冊マガジン本誌でどうぞ。

別冊少年マガジン 2014年6月号 [2014年5月9日発売] [雑誌] (週刊少年マガジンコミックス)

別冊少年マガジン 2014年6月号 [2014年5月9日発売] [雑誌] (週刊少年マガジンコミックス)


仲村さんが見ていた世界

最終回となる今回は中学生の仲村さんの目に映っていた世界のありようが描かれます。また、初めて仲村さんの心持ちが描かれます。
仲村さんが見る世界は歪んでささくれ立ち、自分以外の人物は真っ黒なグシャグシャ、人の口の中にはハエがいて、それがブンブン飛び回る。世界はそんなドロドロやグシャグシャやハエで満ちているように仲村さんの目には映っているのです。
世界は仲村さんを取り込みにかかります。仲村さんはその世界に取り込まれることを恐れながらも、すでにあきらめているようでした。


自分と同じ「変態」の発見

仲村さんは放課後の教室で佐伯さんの体操着の匂いにうっとりする春日くんを目撃します。うっとりする春日くんは、その時だけは真っ黒なグシャグシャではなく、仲村さんには自分と同じ人間=「変態」に見えました。グシャグシャでありながら、グシャグシャのその下から「変態」の正体をのぞかせる春日くんを発見した喜びを仲村さんはノートに綴ります。


仲村さんの孤独と「変態」の意味

仲村さんの目に映る世界では、まともな人間は自分一人であるがゆえに、仲村さんは非常に孤独な存在です。
そして仲村さんは、この世界ではグシャグシャがまともであって、自分の方がおかしいと考えている。だから自分を「変態」と呼んでいたのです。


変わる世界

自分と同じ変態を発見した喜びもつかの間、ささくれだったドロドロの世界は仲村さんに侵入し、取り込もうとしてきます。仲村さんは抵抗をあきらめ、誰かに殺して欲しいと願う。
他の人物と同じグシャグシャになりかけたその時、叫び声が仲村さんを呼び戻す。呼び戻したのは土手を絶叫しながら自転車で走ってきた春日くんでした。
この時、仲村さんを取り巻く世界はいびつなささくれではなくなり、夕焼けの色がつきはじめます。
これは一体どういうことでしょうか?


春日くんに見つけた希望

仲村さんの目に見える世界が色づいたのは、春日くんは仲村さんがこの世界でたった一人見つけた希望だからです。佐伯さんが春日くんによって無理をしている本当の自分に気づき「初めて本当の自分を見てくれた人」と感じたように、仲村さんは変態の同志である春日くんを発見したことで孤独が癒やされ、世界は矯正され、色=希望が見え始めたのです。
春日くんが仲村さんにとってどういう存在だったのかを、2色で描くことで今回は表現しています。この表現は漫画ならではで、効果的で素晴らしい演出だと私は思いました。


思春期の色彩的表現

  1. 世界に自分一人で孤独だけど、同志を発見!
  2. 味わう絶望
  3. 思春期の終わりに見えてくる希望

これらが『惡の華』を通して描かれ、この最終回でも1が描かれています。コミックスの表紙でもこれらが3巻ごとに表現されています。


「うっせー クソムシが」の悲しみ

第1話、そして今回、教師に仲村さんが言い放つこのセリフは、『惡の華』の代名詞とも言える一言ですが、このセリフはこれまで私が想像していた以上の仲村さんが抱える悲しみや絶望が込められていました。まさか彼女の目に映る世界がこんな様相だったとは。。。


最終11巻は6月9日発売

表紙はどんなふうになるのでしょうか。

惡の華(11)<完> (講談社コミックス)

惡の華(11)<完> (講談社コミックス)


作品全体の総括

これはまた別エントリで書きたいと思います。